小林古径・速水御舟展

展覧会

山種美術館で開催中の、[特別展] 小林古径生誕140年記念「 小林古径と速水御舟展 」

私の大好きな作品、重要文化財の速水御舟の「 炎舞 」と小林古径の「 猫 」の対照的な画像が描かれているチラシに目が釘付け。
日程調整して、終了間近にやっと見に行くことができました。

今回の展覧会は、古径と御舟の代表作が一堂に会して見られる貴重な機会で、二人の名品を比較して展示するという、かつてないユニークな展示。こんな貴重な機会、逃すわけにいきませんよね!

古径作品は、前期・後期合わせて山種美術館所蔵の44点が全部見られます。
御舟は天才にして若干40歳の若さで亡くなりましたが、残されている作品は600〜700点。そのうちの1/5ほどにあたる120点の作品を山種美術館が所蔵しているそうで、ビックリ! かつては御舟美術館のようとも言われたことがあったそうですよ。

速水御舟 「 炎舞 」

この作品は、大正14年の夏、御舟が軽井沢に滞在した時の作品で、毎晩のように焚き火をし、炎と群がる蛾を何日も観察して描かれたそうです。何事も頂点を極める御舟らしいエピソードですね。

「 炎は、平安時代から鎌倉時代の仏画に描かれている、伝統的な不動明王の光背などの描写を思わせる」 との解説を聞き、そういう見方をしていなかっただけに、ちょっと衝撃。
不動明王の火炎光背には、「 煩悩を焼き払う 」意味もあるそうです。
勢いがあって素晴らしい炎、この「 炎舞 」作品では、写実的というより模様化されて美しく描かれているので、かえって燃え盛っている様子がリアルに伝わってくる気がします。
神秘的で、美しい炎ですよね!
炎の先端の渦を巻いているような部分、そこに群がる蛾の羽根の表現も絶妙で、羽根の周囲をぼかすことで、動きを演出しているそう。

「絶妙な色合い・古典の様式の美・現実の観察眼を高い時点で融合させた見事な作品」と岸田劉生らも高く評価していたそうです。
ほんとに若くして亡くなられたことが惜しまれますね。

小林古径 「 猫 」

凛とした顔立ちと佇まい。
体の輪郭線も細くてシャープ、じっとこちらを睨んでいるような眼差し。
すごい存在感の猫ですよね。
今までの猫のイメージを覆すような表現に、何故か惹かれてしましました。

古径は大正11年に欧州・エジプトへ行っていて、「パテスト神」のような猫の図像の写生も残っているそうです。
パテスト神とは黒猫の彫刻で、そういえば色は違いますが、古径の猫のイメージにそっくりかも。
日本画家・小林古径の猫の絵が、古代エジプトの神の影響を受けていたなんて、驚きですね!

だからいつも見ていた猫のイメージとは違い、神々しいまでに凛とした美しさを感じていたのかもしれませんね。

たくさんの作品を楽しませていただきましたが、やっぱりこの2作品に惹かれてしまいました。
理屈ではなく、私の心に響いた素晴らしい作品との出会いに感謝です。