モナリザの微笑に似てる?

展覧会

東京ステーションギャラリーで開催されている、ちょっと趣の変わった展覧会、「甲斐荘楠音(かいのしょう ただおと)の全貌」展
今回はちょっと違った視点からご紹介させていただきますね。

「西洋画の美術展はよくいくけど、明治以降の日本画はちょっと…」と、思われている方が多いかもしれませんが、「モナリザの微笑に似ていると評判」と、聞くと「どこがモナリザ?」って、気になりませんか?
なぜ、こんな表情なんだろう?
それにこのポスターの女性、「不穏な笑みを浮かべて、なんだか怪しい」そんなふうにも見えますよね。

そもそも、「なぜ、モナリザ?」って思われませんか?
私は頭の中が ??? でいっぱいだったのですが、甲斐荘は京都市立絵画専門学に在学中に、ダ・ヴィンチやミケランジェロの作品に出会い、かなり影響を受けて自らの画風も変えていったと書かれていて、やっと納得でした。

レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザに似ているというこの微笑みは、ダ・ヴィンチと同じように輪郭線を描かない スフマート の描き方がされているからだそう。

スフマート というのは、輪郭線を描かず細部をぼかす技法のこと。
それ以前の絵は輪郭線を描いていたので、ダ・ヴィンチによって輪郭線を描かずに輪郭を描けるようになり、微妙な表情を表現できるようになりました。スフマートって、絵画史上画期的なことだったんですね。今更ですが、ダ・ヴィンチ凄い!

スフマートというのは、薄い絵の具を何度も何度も塗り重ねて微妙なぼかしを作っていくので、見る角度によって見え方が違うそうですよ。知りませんでした〜。ぜひ、会場で、この作品の口元、いろいろな角度から見てみてくださいね。ピンポイントで作品を見るのも新たな発見があって面白いですよ。

甲斐荘は、新しい日本画を模索するために敢えて西洋のタッチを取り入れたそうですが、それが怪しい雰囲気を醸し出しているのかもしれませんね。
私は、100年以上も前の大正時代に、世界で一番有名だと言われているダ・ヴィンチのモナリザの微笑のような描き方で描いた作家がいたことに、衝撃を受けました。

甲斐荘は34歳くらいまで画家として活躍し、その後映画監督の溝口健二氏からスカウトされ映画のファッションアドバイザーのような仕事に関わります。

28年間で関わった映画は、なんと236本!

雨月物語で、ベネチア国際映画祭の銀賞を受賞し、甲斐荘自身もアカデミー衣装デザイン賞にノミネートされるなど、輝かしい実績を残しています。

昔の時代劇映画って、こんな大胆な柄やデザインの着物を着ていたんだとちょっとびっくりでしたが、伝統工芸としての着物のクォリティの高さにも感動でした。日本の時代劇の黄金期を支えた、豪華絢爛な衣装も必見ですよ。

その他、数多くのスケッチや写真、アイデアの源泉とも言える様々なジャンルの記事が貼られたスクラップブックなどの展示もたくさん。いろいろな事に関心を持っていた様子が伺え、見入ってしまいました。

お伝えしたいことは山ほどありますが、あとは見に行ってのお楽しみに!

私は前評判が良かったので行ってみたのですが、今までにない怪しい魅力を放つ作品に、見ているうちに引き込まれて虜になってしまいそう。と言いながら、甲斐荘フアンになっちゃいました。

今までの認識が変わってしまうかもしれない展覧会、今年の夏の思い出にぜひ見に行かれてはいかかがでしょうか。